Adult Summer  Calidris ruficollis or Hybrid stint (C.ruficollis X minuta)?
トウネンの個体変異?またはニシトウネンとの交雑個体? 成鳥夏羽
大阪府 2005年5月5日
 (撮影:梅垣佑介)


下の写真をまず先入観無しに全てご覧いただきたい。トウネンに見える方、ニシトウネンに見える方それぞれいらっしゃるのではないだろうか?
以下は写真から読み取ることのできる範囲内ではあるが、トウネン・ニシトウネンと比較すべき特徴を書き出してみた。 (下へ続く)↓

トウネン(左)と問題の個体(右)

(体型の印象)
比較的横長で、トウネンに近いプロポーション。脚の長さはトウネンと同等に見えるが、カットによってはやや長めのニシトウネン的に見える場合もある(2番目・4番目の写真)。
(頭部〜胸部)
上胸および頸部より後頭・頭頂にかけて、トウネン夏羽の様に比較的べたっとした赤褐色が広がっている。しかし白く太い眉班が眼の後方まで明瞭で、嘴基部から喉にかけて白く抜けている。眼の下にも白色部がある。これらの部分の白と赤褐色のコントラストが非常に明瞭で特徴的な顔つきを作り出している。
(嘴)
やや長めだが太さはトウネンと大差ない印象。
(背面)
マントル部・肩羽はトウネン夏羽と大差無い。また雨覆はトウネン同様に灰色の部分が殆どで、赤味のある部分が見当たらない。
(尾羽)
やや長めで先端は初列風切先端とほぼ同等位置に見える。中央尾羽の周囲にニシトウネンのように赤褐色部分がある。(1番目・4番目の写真で僅かに見えている。実際の観察時にも明らかに確認できたとの事。)。

その他、撮影者によると、この個体はトウネンよりも若干大きめに見えた、脚を後ろから見たときにトウネンより細く見えた、頭部の赤褐色の部分の色合いがトウネン・ニシトウネンともやや異なる印象があったとの事である。

一歩引いて眺めてみて、全体のプロポーションの他、頭部の赤褐色の部分の発色のパターン、雨覆に赤味の全く無い、といった点から判断すれば、どちらかと言うとトウネンのバリエーションの一つとする方が説明がつきやすい(あくまでも体型を最重要視するのであれば、そう言わざるを得ない)。

しかし気になるのは特徴的な「顔」の印象で、トウネンでも夏羽に換羽中の個体であれば喉が白色の個体も見られるが、そのような個体は通常は周囲の赤褐色部分の色もまだ薄くてコントラストに乏しく、その後は喉部も含め比較的一様に赤味を増していくという変化が見られることが多いと思う。しかしこの個体のように、上胸や後頸部がほぼ完全に赤く換羽しているのに喉や眉班が換羽せずにここまで明確なコントラストが生じているというパターンは、トウネンの通常の個体ではあまり見られないと思う。

もう1点非常に気になるのは中央尾羽の周囲に赤褐色部分がある点である。この特徴は成鳥夏羽のニシトウネンではまず間違いなく見ることができる重要な識別点であるが(その割にあまり認知されていないが)、トウネンの夏羽個体では少なくともこれまで管理人が観察してきた中ではこの特徴を持つ個体は見た事がない。そう考えると、この個体は単純にトウネンと言っていいのか、という疑問が少なからず生ずる。確証は無いが顔の印象と併せて、トウネンとニシトウネンの中間個体、種間雑種という可能性もあるかもしれない。果たしてどうだろう?

この個体ほど特徴的でなくても、トウネンぽく見えるニシトウネン、ニシトウネンぽいトウネン、という個体はたまに観察されていて、頭を悩ませる存在となっているのはご承知の通りである。強引に仮説を立てるとすれば、この両種も繁殖地がオーバーラップしているし、大型カモメのように色々な段階の中間個体というのが程度の差はあれ分布していて、そのうちの幾つかが毎年日本へ渡来しているのではないか、という気がしてくる。


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