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■山口県岩国市でのコウライアイサの事故越夏
山口県岩国市美川町南桑の錦川流域にて、2008年末より少なくとも2014年までコウライアイサ雄1羽が滞在した。
この個体は同地で越冬中に何らかの原因で飛翔することができなくなり、渡去が不可能となったことでその後約6年間を通じてほぼ同じ流域で見られた。そのため通常は日本では見られない夏期のエクリプスを観察することができた。
特に本種のエクリプスに関しては画像情報も少ないことから、今回はイレギュラーな事例ではあるが記録として残す意義はあると思われる。
2009年4月
・この冬に何らかの理由で飛べなくなり、一緒に越冬していた雌は渡去し、1羽取り残されてしまう。
2009年8月
・初めての1羽での越夏。
2009年9月
・画像を撮れなかったが、既に繁殖羽に換羽が完了していた。
2009年12月
・なんと雌が戻ってきて一緒に越冬した。
雌は飛んで移動できるのに、雄はその後を泳いで追いかけなければならず、健気だった。
2010年1月
2010年8月
・2度目の越夏
やはり8月中旬の時期にもかかわらず、繁殖羽を多く残している。春から継続して観察ができていないので、換羽不全なのか、逆に繁殖羽への換羽が早期に始まっているのか判断ができない。
2010年12月
・この冬より雌は渡来しなくなった。
2011年1月
2011年8月
・3度目の越夏
この時は比較的、繁殖羽を残していない。
2012年1月
・警戒心が強く撮影にブラインドを使用してみたが、気づかれ上手くいかない。
2012年8月
・4度目の越夏
また斑の多い羽衣。
2013年1月
・ブラインドが功を奏しこれまでで最接近。
2013年2月
2013年8月
・5度目の越夏。ブラインド使用。
2013年12月
2014年8月
・6度目の越夏。
これまでで最も繁殖羽を残していない。
2014年から2015年の冬は現地へ訪れる機会を作れず、越冬していたかどうか不明。
2015年の夏以降は、同地で観察することができなかった。
2014年以降、山口県南部〜広島県にかけて記録的豪雨が発生し、錦川流域の水位がしばしば氾濫危険水位に近づく状況が起こったと推測される。
もしかすると飛ぶことのできなかったこの個体は、その中を生き延びることができなかったのかもしれない。
文責・写真 N.Kawano ("@Stint")
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