Juvenile Calidris Hybrid ?
The mystery sandpiper;  similar to "Cox's Sandpiper"

?????
茨城県稲敷郡新利根町 2001年8月26日
 (撮影:深川正夫、今井光雄)



 ↓More Photos(Click)

この個体は2001年8月25日に初確認され、アメリカウズラシギと共に数日間滞在し多くの話題となった。
一見アメリカウズラシギ幼鳥に似ているが、同時に観察されたアメリカウズラシギ(♂と思われる)に対し、体格が一回り小さい。また嘴が頭部に対してかなり長く見える、等といった点より該当種の同定が困難である。

既にウェブサイト上にてこの個体についての情報や画像が数多く紹介されているので、ここでは詳細を述べるのは省略することにするが、議論の中心となっているのは,本個体が果たして何らかのハイブリッド(雑種)なのか、もしくはアメリカウズラシギの変異個体なのかどうか、という点だろう。

当然その結論は簡単に出せるものではなく、厳密には捕獲して遺伝子レベルでの調査が必要となるので、画像からではその外見から推察することしかできないのだが、筆者(@stint)はアメリカウズラシギとその他の種(ハマシギまたはサルハマシギ?)のハイブリッドという見解の方を支持したいと思っている。
各種測定値がアメリカウズラシギの変異の範囲内であること、羽衣に同種の特徴が強く現れていることが同種の変異個体とする見かたの根拠ではあるのだが、アメリカウズラシギで小型とされるメスタイプの個体や今までの国内で記録された同種の画像でこのようなタイプがこれまで知られていない事、測定値以外で同種ではあまり見られない特徴のある部分(側胸部の縦班が粗く斑紋の形状も異なる、脚が極端に細い)があるために、本個体には何か別種の形質が働いているのではないかという気がしてならない。

勿論それだけでアメリカウズラシギの変異個体を否定はできないが、雑種の場合必ずしも両種の特徴が均一に現れるとも限らないし、本個体は変異の度合いが極端なだけに、雑種と考える方が自然な説明ができそうに思うのは筆者だけではないだろう。

またこの個体の特徴が、アメリカウズラシギとサルハマシギの雑種とされる"Cox's Sandpiper" と非常に類似していることも特筆すべき点である。特にアメリカで唯一記録された"Cox's Sandpiper" 幼鳥と重なる印象を持っているため、本個体との比較はその素性を知るためにも重要だろうと思われる。

但し"Cox's Sandpiper"自体が現在標本数が数少なく、アメリカウズラシギとサルハマシギの交雑によって同様の特徴を持つ個体がどの程度の確率で生じるのかどうか依然不明であり、それによって"Cox's Sandpiper"という呼称の「定義」をどう扱うのか、(つまり「アメウズとサルハマの雑種」を全てCox's と呼ぶのか、それとも両種の雑種の中でのある類似した1バリエーションを指すべきなのか、あるいは過去に独立種として記載された異名として抹消すべきなのか) ということがどうもはっきりしていない気がするので、本個体が「"Cox's Sandpiper"かどうか」という議論については慎重にすべきかと思う。

なお、本個体については氏原氏のHPにも掲載されているので、ぜひご参照されたい。



(ご意見はメールにてお願いします。)


This individual(left) with adult Pectoral Sandpiper(right).


Top > Mystery Sandpipers