Worn breeding plumage White-rumped Sandpiper
Calidris fuscicollis
コシジロウズラシギ 磨耗した夏羽
神奈川県川崎市 2006年8月
  (撮影:清水博之)

おそらく日本初記録の個体である。多摩川河口と後背地の工場跡地で2006年8月5日に確認されて、当初はヒメウズラシギの変な個体?と言われていた。しかし翌日に撮られたこれらのデジカメ画像等を現場で精査し、本種と確認されたようだ(まさにデジタル時代!)。終認は8月12日だった。
(下に続く)


今回の個体の第一印象としては、ヒメウズラシギ同様にトウネンより一回り大きく、かつハマシギやウズラシギよりは小さい体格なのだが、体型はヒメウズラシギほど細身の印象ではなく、ややずんぐりとした風に見える(ただしこれは羽毛の状態にもよる)。初列風切は尾羽先端より大きく突出しているが、動作によってはあまり突出が目立たない瞬間もあった。おそらく初列の突出量がヒメウズラシギよりも少ないため体型に差異があるように見えるのではないかと思う。もっともこれも成鳥・幼鳥で初列の突出量が異なる場合があるしヒメウズラシギも幼鳥しか見たことが無いので何とも言えないが。

最も大きな特徴は、名前の由来でもある、飛翔時に確認できる上尾筒(正確には腰ではない)の白色帯で、トウネンのように中央部で分断されず三日月形にはっきりと見える。これも単に“腰”に白い部分があるからというのではなくその形状が特徴なので注意。

模様については、本種は頭部から胸にかけての縦班が脇腹まで連なっているのがヒメウズラシギとの大きな相違点で、静止時の識別点として有効。また肩羽の夏羽の黒い軸班の先端部の形状がヒメウズラシギのような幅広く膨らんだ形状ではなく、やや直線的でむしろトウネンに似た印象を持っている。また僅かだが一部の肩羽の羽縁や耳羽の部分に赤褐色味がある。総合的に見るとそれらの特徴が一見「変なヒメウズラ」の雰囲気を醸し出しているが、これがコシジロウズラシギ独特のjizzだともいえる。

嘴は先端部が若干下湾し、ヒメウズラシギよりは細めで短い。下嘴の基部が淡色なのが本種の特徴とされるが、この個体は淡色には見えない。もっとも海外個体の写真を見ると個体差がかなりあってあまり淡色に見えない個体もいる。

今回の個体の観察(筆者は8/12)では、トウネンよりも動きが活発で、採餌の際には立ち止まることが少なくせわしない感じだった。このあたりはヒメウズラシギに似ている。

この個体は一応、成鳥?としておいたが、第1回夏羽の可能性についてはかなり磨耗した個体だし時期も時期なので何とも言えない。肩羽とマントル部に一部冬羽の伸長が見られる。
もともと北米大陸の中でもカナダ北部から大西洋岸のルートを主に渡る種だが、繁殖地はアラスカまで伸びているので今後も日本への迷行の可能性はあるだろう。次はいつ現れるだろうか?
("@stint"N.K.)

(撮影:清水博之)



コシジロウズラシギ  同所
Nikon D200 + Nikkor ED500mmF4P + TC-301 (撮影:"@stint"N.K.)

終認日の撮影。飛翔時のトウネンとの比較で、“腰”の白の形状の違い、サイズの差、翼長の差が判る。



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