Adult breeding Charadrius semipalmatus
ミズカキチドリ 成鳥?夏羽 愛知県 2007年4月 
Nikon D200 + Nikkor ED500mmF4P + 1.4tele (撮影:"@stint"N.K.)

この個体は2006年11月に発見者のshorebirds-wadersさんによってデジスコ撮影され、その際に内趾側の蹼(みずかき)があることを確認できたことから、その他の特徴も総合して、ミズカキチドリの可能性が極めて高いということで、大きく話題となった。
その後、同じ地域で5月頭まで越冬したが(行方不明の期間や夕方しか確認できない日もあり)、渡去直前に下の写真のように夏羽に換羽した姿を見せてくれた。
→ 冬季の同一個体の画像はこちら photos of the same bird in winter

ミズカキチドリは北米大陸北部で繁殖し(北米以外で繁殖するハジロコチドリと対照的)、北米南部・中南米の沿岸で越冬する。
日本国内での本種の観察例としては、90年代に千葉県谷津干潟や福岡県和白干潟で成鳥個体の撮影事例があるが、本種はハジロコチドリに酷似することから、蹼などの識別点の細部を鮮明に撮影されない限り、同定の確証に欠けると考えられていた。
今回の個体は、昨今のデジタル撮影機材の進歩もあって、そういった細部をアップで撮影することが可能だったことから、同定に不安な要素はほぼ見当たらず、実質的な記録としては初めてと言っても良いのではと思う。

とりあえずこのサイトでは、この個体の識別学的精査や年齢識別などについてはひとまず置いておいて、管理人がこの個体を見に行って感じた個人的な印象を記すことにとどめます。

(下に続く)


<ハジロコチドリとの主な相違点>
・内趾側の蹼(みずかき)がある。非常に小さいが明確に存在が判る。
 (外趾側の蹼は両種ともあるが、ミズカキチドリの方が大きめと言われる。個体差あり。)
・過眼線が口角の頂点部より上の位置で嘴に接する。(これも個体差あり)
・アイリングが各羽衣を通じ黄色味が強い。

尚、アイリングはかなり細いため、遠距離の観察の場合や眼の周囲の羽毛が膨らんでいる場合は確認しにくい。そのためコチドリのアイリングよりも目立たず、一見するとリングが無いように見えることも多い。

今回の個体の観察で、内側の蹼の存在を野外で確認するのはなかなか難しいということがよく判った。脚部をデジタル撮影でのクローズアップを用いて確認しないと確証を得ることができない。しかも脚に泥が付着していたり、指を一杯に広げていない状態では、写真判定が不可能になるほどの微妙な部分なので、かなりの好条件で撮影されれていることと、様々な周辺条件を考慮したうえの判断が必要になる。

声はコチドリよりトーンが高く少し尻上がりのピィッという感じ。ハジロコチドリよりもややトーンが高いという。しかし今回の個体はそのような声の他にもトーンの低いピオ、ピオという声も出していたので、ハジロコチドリと声だけでの識別ができるとは一概に言えないのではないかと感じた。

サイズはハジロコチドリとコチドリの中間で、コチドリ群中に混じるとサイズにはあまり差が無いように見えることも多かった。

よく議論されるのが、嘴の長さがハジロコチドリより短い傾向がある、という点だが、この個体はその点が「らしくない」という意見も聞いた。しかし海外の画像を見ると嘴の長さにはかなり個体差があるようなので、嘴の長さが野外識別の決め手にはなり得ないのではないか、と思う。


同一個体の脚部(撮影 2月)

(参考) ハジロコチドリの脚部(撮影:2006年4月) 



ミズカキチドリの頭部・夏羽


→ 冬季の同一個体の画像へ photos of the same bird in winter



> Plovers & other shorebirds top > Semipalmated Plover >