Little Stint  Calidris minuta
  ヨーロッパトウネン(ニシトウネン)  ( 'Yoroppatonen' or 'Nishitonen' )
   
 


L12-14cm     P / W

【 分布 】
日本全国 数少ない旅鳥または冬鳥。渡り期はトウネン群中に混じることが多い。日本ではトウネンより定期的に越冬する傾向が強い。
北ヨーロッパからシベリア北部の北極圏で繁殖し、アフリカから西南アジアが本来の主な越冬地。繁殖地はトウネンと一部重なっている。

【 環境 】
海岸(干潟・砂浜)、河口干潟、埋立地、休耕田、蓮田など。

【 印象 】
(各羽衣共通)
・トウネンと比較して、基本的には足がやや細長く腰高で、後半身が短い体形を持つ。そのため全体的にトウネンよりも寸胴で華奢な身体の印象を受ける。足は特に関節より上の脛(tibia)の黒い裸出部がより長く見える。

▼体形の違いのイメージ (左)ヨーロッパトウネン (右)トウネン Typical shapes of Little (left) & Red-necked(right)

    
(注:上図の程度の違いが常時発現しているわけではない。個体の状態により「体形の錯視」に注意が必要。

・静止時に三列風切先端からの初列風切の突出は大きい(PP+)。特にフレッシュな幼羽では初列風切先端が尾羽先端より突出する傾向が強い(WP+)。ただし成鳥では個体差が大きく、初列風切があまり大きく突出しない個体も見られる。またトウネンにも若干突出する個体がいるので、注意が必要。

▼(左)ヨーロッパトウネン幼鳥 (右)同 春の成鳥 ▼(参考)トウネン幼鳥

(注:左はあくまでも顕著な幼羽個体の事例。右は成鳥夏羽の一例。
換羽状態や翼の保持位置の変化によって位置関係は変動するので絶対的ではない。)


・足は全体に黒く、蹼は無い。
・嘴は全体的にやや細く先端が尖るためトウネンより若干長めに見える場合が多い。
・泥地を走り回りながら、さっと胴体を前傾しつつ軽く地面をつつき、再び走り出す採餌法(トウネンよりもヒバリシギ的)をとる事が多い。
・歩く時に細長い脚を大きく曲げるため、トウネンよりもヒョコヒョコした感じの華奢な動きに見える(あくまでも感覚ですが、jizzとしては重要)

(夏羽)
・全体にオレンジ色味が強くなるが、頭部の赤味はやや少ない。少し赤味の薄いトウネン夏羽のような第一印象。
・夏羽に完全に換羽しても喉の色は完全に白く残る。(ただし、トウネンの夏羽へ換羽途中の個体も喉が白いので、この点のみで識別しないように注意。)
・春に雨覆を夏羽に換羽するため、トウネン夏羽と異なり雨覆まで赤褐色の羽縁が明瞭になるので、識別に役立つことがある。
・中央尾羽の羽縁部が赤褐色になる(トウネンにもごく稀にそのような個体がいるが、本種の場合は殆どの個体が該当)
・夏羽では上背の「V字模様」はトウネン夏羽同様に不明瞭な個体が多い(幼羽とは異なるので注意)。
・トウネンよりも下列肩羽が比較的大きく伸長する傾向が強い。

(冬羽)
・上面の灰色が強く軸班が細くなり、トウネン冬羽に似た印象。
・成鳥では下列肩羽が比較的大きく伸長する傾向が強い。

(幼羽)
雨覆と三列風切において、黒い軸班と淡褐色の幅広い羽縁が非常に明瞭になる個体が多い。
 (よく誤解されるが、あくまでも羽縁が広く明瞭かどうかの違いであって、羽縁があるか無いかの違いではない点に注意)
▼幼羽の雨覆の模様の違い (左)トウネン (右)ヨーロッパトウネン Typical pattern of coverts of juvenile Red-necked(left) & Little(right)


幼羽では上背の「V字模様」が特に明瞭な場合が多く、そのため背面のみを見るとトウネンよりもヒバリシギに似て見える事が多い。(夏羽とは異なるので注意)
頭頂部の褐色部分が浮いて見えることが多く、さらに副眉班が見られることも多い(ない個体もいる)。
・後頭部から頸部は灰色味が強い。ただしヒバリシギ幼鳥よりは頭部の模様が少ないので全体的にやや淡色に見える。
・首の前面にはトウネン幼羽と同様に模様が無く、腹部まで白い無地の部分が続く。

【 鳴き声 】
チイッ、ピッ  トウネンより鋭い声

【 類似種 】 ※種名クリックで各種のページへリンク
  ■要注意:
      ■トウネン(羽衣・体型の個体差、観察条件によりオーバーラップする場合)
      ■ヒバリシギ、アメリカヒバリシギ[未記録](摩耗個体、幼鳥、冬羽 :脚が泥で見えない場合)
      ■オジロトウネン(冬羽、夏羽換羽中の個体、嘴の形状)
  ●やや注意:
      ●ヒメハマシギ(嘴の個体差、色の個体差)
      ●ミユビシギ(換羽中の個体 :冬羽で大きさ不明の場合)

【 雑学 】
以前はかなりの珍鳥扱いだったが近年は識別法が確立されて各地で記録が増え、東京湾でも毎年のように越冬個体が見られる。
和名は「ニシトウネン」の方が繁殖分布からみて適当だと思うが、日本産鳥類リスト第6版(1997)以降で第7版でもヨーロッパトウネンとされているため、そちらに合わせるのが一般的のようだ。略して「ヨロネン」ともよく呼ばれる。


  ヨーロッパトウネン画像集  more images

夏羽  Breeding plumage

初期  Fresh
May 2005, Mie Pref
April 2004, Chiba Pref.  (photo: Ozawa)
May 2003, Miyagi Pref.  (photo: Y.K.)
May 2003, Aichi Pref. - moulting
April 2000, Chiba Pref
May 1996, Hyogo Pref
摩耗個体  Worn
August 2015, Chiba Pref.
September 2005, West Jp.  (photo: T.T.)
September 2004, Kagoshima Pref.  (photo: Tokorozaki)
September 2002, Shiga Pref.(1)  (partialy photo:T.T.)
September 2002, Shiga Pref.(2)  (partialy photo:T.T.)
October 2001, Miyagi Pref.  (photo: Shiraishi)


冬羽  Non-breeding plumage

December 2014 - January 2015, Osaka Pref.
September 2009, Chiba Pref.
September 2007, Chiba Pref.  (photo: Shimizu)
September 2005, West Jp.  (photo: T.T.)
October 1995, Osaka Pref.  (photo: Koyama)
Aichi Pref.(photo: Koyama)

 
第1回夏羽  1st-summer
 

第1回冬羽  1st-winter

December 2014, Chiba Pref.
November 2007, Ibaraki Pref.  (photo: Shimizu)
February 2003, Okinawa Pref.
November 2003, Miyagi Pref.  (photo: Shiraishi)
October 2002, Chiba Pref.  (photo: Imai)
Winter 1999, Chiba Pref.  (photo: Ozawa)


幼羽  Juvenile

典型的な個体  Regular
September 2010, Okayama Pref.
September 2010, Mie Pref.
September 2010, Mie Pref.
September 2009, Chiba Pref.
September 2008, Mie Pref.
September 2005, Kyoto Pref.
September 2005, West Jp.  (photo: T.T.)
August 2004, West Jp.
September 2004, West Jp.
September 2002, Mie Pref.
September 2002, Miyagi Pref.  (photo: Shiraishi)
September 2001, Okinawa Pref.  (photo: T.T.)
September 1994, Shiga Pref.
September 1994, Chiba Pref.  (photo: Fukuda)
摩耗個体  Worn
September 2008, Saga Pref.
September 2004, Kagoshima Pref.  (photo: Tokorozaki)
Autumn, Aichi Pref.  (photo: Koyama)



  

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