Red-necked Stint  Calidris ruficollis
  トウネン  (Tonen)


L13-16cm     P (/ W)

【 分布 】
日本全国で主に旅鳥、ごく少数が主に南日本、沖縄で越冬する。
本州での渡りのピークは、春期は5月、夏・秋期は8月中旬(成鳥)から9月中旬(幼鳥)。
場所によっては数百羽単位の群れも見られるが、観察可能な環境は限られている。
ユーラシア北東部の北極圏で繁殖し、東南アジアからオーストラリア・ニュージーランドまでの地域で主に越冬。
第1回冬羽個体の多くは越冬地周辺に滞在するため、日本では第1回夏羽個体の観察例は多くない。
→<関連Link>
 Shore Birds In Japan/ トウネン7 Red-necked Stint/Calidris ruficollis by Shorebirds-wadersさん

【 環境 】
海岸(干潟・砂浜)、河口干潟、埋立地、休耕田、蓮田など。内陸部では個体数は少ない。
水深が深い場所は採餌できないため好まない。水田では降雨などで水量が増えるとすぐ渡去してしまう。
干潟の減少に伴い、埋立地など人工的環境に依存することも多い。

【 印象 】
(各羽衣共通)
・ヨーロッパトウネンと比較して、胴長で短足な体形で、背が低く横に長い印象。特に身体の後半分が長い。足の関節より上の脛(tibia)の黒い裸出部は比較的短い
▼体形の違いのイメージ (左)トウネン (右)ヨーロッパトウネン  Typical shapes of Red-necked (left) & Little(right)
  
(注:上図の程度の差が常時発現しているわけではなく、個体の状態による「体形の錯視」に注意が必要。

・静止時に三列風切先端からの初列風切の突出は大きい(PP+)。さらに尾部全体の突出により中央尾羽先端より初列風切先端が突出しない傾向が強い(WP-)。ただし個体差が大きく、尾羽より初列が若干突出する個体もいるので、トウネンか非かを検討する際はこの点のみに拘ると判断を誤る場合がある。

(注:上図はあくまでも顕著な幼羽個体の事例。換羽状態や翼の保持位置の変化によって位置関係は変動するので絶対的ではない。)

・嘴は比較的短くやや太め、先端が丸い傾向がある。ただし個体差がかなりある。
・足は黒。蹼(みずかき)は基本的に無い。
・平坦な泥地では頭を細かく上下しながら、身体をあまり前傾させずに力強くゆっくり歩きまわる採餌法をとる事が多い。

(夏羽)
・頭部がほぼ均一に赤褐色に染まるのが特徴的。(しかし換羽中の個体ではまだ喉が白い個体もいるので、ヨーロッパトウネンとの識別に注意が必要。)
・肩羽と三列風切の羽縁が赤褐色になる。しかし三列風切の換羽は比較的遅く、日本では灰色の冬羽のままの個体も多く見られる。
・上背の淡色の「V字模様」は不明瞭または全く無い個体が多い。ただしいくらかはV字模様が明瞭に発現する個体もいる。
完全な夏羽でも、雨覆には灰色の摩耗した冬羽を多く残す。(春に雨覆の大部分を赤褐色の夏羽に換羽するヨーロッパトウネンとは対照的。)
・中央尾羽の羽縁は灰色の個体が殆ど。(ヨーロッパトウネン夏羽の赤褐色のそれとは異なる。)ただしトウネンにもごく稀にそれが赤褐色になる個体もいる。
・第1回夏羽では、第1回冬羽に似て、赤色味がなく灰色の多い個体が多い。

(冬羽)
・上面が灰色で、羽に細い軸班がある。頭部には細かい班がある。

(幼鳥)
・幼羽は眉班が薄く、顔の「メリハリ」が少ない傾向がある。
上背の「V字模様」は殆どの個体で不明瞭。ただし、稀に明瞭な個体がいる。(ヨーロッパトウネン幼羽では殆どの個体で明瞭)
・典型的な幼羽では、肩羽は羽縁の赤味がやや強い個体が多く、軸班は太い。
・典型的な幼羽では、ヨーロッパトウネンと比較して、雨覆と三列風切が、羽縁と軸班のコントラストが少ないぼんやりした模様に見えることが多い。しかし幼羽の模様は個体差が非常に多く、上記はあくまでも傾向である。肩羽の軸班が「碇型」になる個体、雨覆の羽縁のコントラストがやや明瞭な個体、全体に赤味の強い個体などが少なからず存在する。そのため種の同定は体形的な特徴を含めて総合的に判断する必要がある。
▼幼羽の雨覆の模様の違い (左)トウネン (右)ヨーロッパトウネン Typical pattern of coverts of juvenile Red-necked(left) & Little(right)



【 鳴き声 】
チュリッ プリッ 

【 類似種 】 ※種名クリックで各種のページへリンク
  ■要注意:
      ■ヨーロッパトウネン[ニシトウネン](羽衣・体型の個体差)
      ■ヒレアシトウネン[未記録種](幼鳥は酷似する)
      ■ヒメハマシギ(嘴の個体差かつ下列肩羽の模様の個体差でオーバーラップする場合、摩耗した個体など)
  ●やや注意:
      ●ミユビシギ(夏羽、摩耗個体で大きさ不明の場合)
      ●オジロトウネン(冬羽)
      ●ヒバリシギ(幼鳥の個体差、冬羽、脚が泥で見えない場合)
      ●ヘラシギ(トウネンの嘴へ泥が付着した場合)

【 雑学 】
・小型のシギの中では日本では最もポピュラーな種の一つ。しかし欧米では迷鳥で、かなりの珍鳥なので現れるとニュースになる。
・極東種の多くの例にもれず、海外の図鑑の図版では体形や羽衣の記述の誤りが散見されるので、十分な注意が必要。
・春期はハマシギの増加より後から数が増え、秋期はハマシギの増加の前に数が減少する。(おそらく渡りの距離の違いのためと思われる。)
・トウネンという和名は、昔は体が小さいために「今年(当年)に生まれた鳥」だと思われていたことによる。江戸時代の呼称は「当年子(とうねご)」。
   


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夏羽  Breeding plumage

初期  Fresh
May 2012, Aichi Pref.
May 2010, Hyogo Pref.
May 2009, Aichi Pref.
May 2006, Aichi Pref.
May 2005, Aichi Pref.
May 2003, Aichi Pref.(1)
May 2003, Aichi Pref.(2)
May 1996-1997, Hyogo Pref.
May 1997, Hyogo Pref.(flight)

摩耗個体  Worn
August 2010, Mie Pref.
September 2006, Osaka Pref.
August 2004, Osaka Pref.
September 1999, Ibaraki Pref.
August 1994, Hyogo Pref.
August 2000, Chiba Pref.  (photo: Ozawa)


冬羽  Non-breeding plumage

December 2014, Chiba Pref.
September 2012, Osaka Pref.
September 2006, Osaka Pref.
September 1994, Hyogo Pref.
January 1999, Chiba Pref.  (photo: Ozawa)


第1回夏羽  1st-summer

May 1997, Hyogo Pref.


第1回冬羽  1st-winter

December 2014, Chiba Pref.
December 2009, West Japan
January 2003, Kagoshima Pref.  (photo: Tokorozaki)
April 1998, Chiba Pref.  (photo: Uno)


幼羽  Juvenile

August 2014, Mie Pref.
August 2013, Mie Pref.
August 2010, Mie Pref.
September 2003, Ishikawa Pref.(2,3)
September 2003, Ishikawa Pref.(1)
August 2003, Kyoto Pref.
August 2004, Osaka Pref.(1,2)
September 2003, Miyagi Pref.(1~3)  (photo: Shiraishi)
September 2002, Miyagi Pref.  (photo: Shiraishi)
September 2001, Kyoto Pref
September 1999, Ibaraki Pref.(1,2,3,4)
September 1998, Chiba Pref.(1,2)
September 1995, Hyogo Pref.(1,2)


変わった個体  Variations

May 2015, Osaka Pref.- Odd variation 全身「真赤」な夏羽
August 2003, Osaka Pref.- Odd variation バフ変
September 2004, Ishikawa Pref.- Rufous juvenile 赤味の強い幼羽
September 2001, Hyogo Pref.- Pale juvenile 色の薄い幼羽
August 2004, Osaka Pref.(3)- Similar to other stints 違和感ある幼鳥
September 2001, Mie Pref.- Pale-faced & strong contrasting coverts 違和感のある幼鳥
September 2002, Shiga Pref.- Sharp-billed 嘴がやや長め?
August 1985, Ibaraki Pref.( photo: Ozawa)- Heavy-billed 嘴が太い




  

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